主婦の損害としてどのようなものがみとめられますか。
以下の事例で解説します。
1. 休業損害について
主婦は賃金を得ていないとして過去には否定される例もありました。しかし、最高裁昭和49年7月19日判決・民集28巻5号872頁は、「結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によって、現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に、評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば、当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は自ら家事労働に従事することにより財産上の利益を挙げているのである」とし、さらに「具体的事案において金銭的に評価することが困難な場合が少なくないことは予想されうるところであるが、かかる場合には現在の社会情勢等にかんがみ、家事労働に専念する妻は平均的労働不能年齢に達するまで女子雇用労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である」としました。よって、現在では、主婦の場合、現実の賃金が全年齢女子平均賃金センサスをこえれば現実収入で、越えなければ全年齢女子平均賃金センサス(3,559,000円(平成23年))で計算されることになります。
もっとも、自賠責保険では、一日5700円×通院実日数で計算しますが、通院実日数の全日が認められることは難しいようです。
この点、弁護士は、以下のような計算で相手方損害保険会社と交渉します。
3,559,000円÷364日≒9,751円/日
40日×9,751円+(90日-40日)+50日×9,751円×0.3(労働が制限された割合の目安=具体例によって様々)=536,305円
以上の計算で示談ができない場合、訴訟となりますが、0.3は症状によって様々です。
2. 逸失利益について
逸失利益についても、基本的に、年収を全年齢女子平均賃金センサス(3,559,000円(平成23年))で計算します。そして、14級9号ですと、労働能力喪失率5%、喪失期間5年とされることが多いので、以下のとおりで相手方損害保険会社と交渉します。
3,559,000円×0.05×4.3285(将来分を現在もらうことで金利を控除した5年のライプニッツ係数)=770,256円
自賠責では月収275,100円について67歳まで労働能力を5%喪失したとして計算しますが、上限が慰謝料と合わせて75万円のため(14級9号の場合)、逸失利益だけで計算されることはあまりありません。
3. 慰謝料について
慰謝料について通院慰謝料は、自賠責の場合、4,200円×(実通院日数の倍か通院期間の少ない方)で計算されますので、設問では
4,200円×40日×2=336,000円
となります。
ただ、弁護士は、裁判所がこれまで認定していた慰謝料を参考して、独自の基準(「民事交通事故訴訟」「損賠賠償額算定基準」(通称「赤本」))の基準で傷害慰謝料を計算しています。
各所のホームページでその表を掲載していますが、日本弁護士連合会交通事故相談センター東京支部は赤本にある同表の掲載を許可したことはありません。
同支部では研究目的での掲載しか基本的には許可しておりません。
よって、各ホームページで同表を掲載している方は、著作権侵害をしていることになります。ご注意ください。
そこで、弁護士基準を知りたい方は、赤本を購入されるか、弁護士にお尋ねください。
4 .高齢の主婦の場合
このような方の場合、基礎収入が全年齢女子平均賃金センサス(3,559,000円(平成23年))より低く認定されるときがあります。詳しくは弁護士にお尋ねください。