【判決要旨】
高速道路で、車線変更しようとしたが途中で元の車線に戻った自動車に後続の自動車が追突した事案について、30キロ以上速度超過していた後続車両の過失6割、車線変更中止の前方車両4割と認定した。
大阪地裁 平成14年8月30日判決(控訴和解)
事件番号 平成13年(ワ)第8631号
損害賠償請求事件(第1事件)
平成14年(ワ)第398号
損害賠償請求本訴事件(第2事件)
平成14年(ワ)第4678号
損害賠償請求反訴事件(第3事件)
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1488号
(平成15年4月17日掲載)
【事実の要旨】
原告は、原告夫所有の普通乗用車を運転し、平成12年12月27日午後9時50分ころ、大阪府東大阪市内の80キロメートル制限高速道路を走行中、車線変更の途中で中止し元の車線に戻った直後、加害ベンツに追突され、中央分離帯に接触後、訴外車に衝突して全損状態となり、原告も頸椎捻挫(頚椎捻挫)等で119日通院し151万5,295円を求めて第3事件を提起し26万6,481円認容、原告夫は原告車両損害145万6,900円の請求で87万4,140円認容、求償権行使の甲は39万5,483円請求で23万7,289円認容の第1事件、前部大破の加害ベンツは原告に対し285万9,097円を求めて第2事件を提起した。
裁判所は、夜間の高速道路における車線変更時の追突事故で被追突車両に4割の過失相殺を適用した。
加害ベンツは、原告車を追い越すべく車線変更したところ、被害車も車線変更しようとしたので、元の車線に戻ったところ「進路変更を中止して第2車線上に戻った被害車両との間隔が狭まり、急制動の措置を講じたものの間に合わず追突」したと認定、90キロメートル走行の被害車を「約40メートル前方に認めた際に被告が衝突の危険を感じ」「急制動措置を講じた」が、「前部が大破するほどの追突をしている」ので、「制限速度を時速30キロメートル以上超過する速度で走行していた」とし、被害車が「進路変更を途中で中止せざるを得なくなった原因が」被告の急接近にあり「過失割合は、被告の方が大きい」が、被害車も「後方の車両の動静に十分注意した上で戻る」ことをしなかったので「過失割合は、原告が4割、被告が6割と解する」と認定した。
加害車は、4年前初度登録、走行距離4万4,800キロメートルの「ベンツであり、被告が1か月前約500万円で購入、事故当時の時価は約410万円程度であった」が、「外観上・機能上の損害を被ったものとは認めることができない」「格落ち損の請求は理由がない」と否認した。
修理費は、209万9,097円を支払っているが、「原告ら側の損害調査会社」は、6項目82万9,605円を否認しており、「一義的な判断が困難である」から「争いのある金額の半額に当たる41万4,802円の限度で損害と認める」と認定した。
裁判所の判断は以下のとおり。
判 決
第1事件原告 松内謙一
第1事件原告 日本興亜損害保険株式会社
同代表者代表取締役 松澤 建
第2事件被告・第3事件原告 松内浩子
上記3名訴訟代理人弁護士 金澤昌史
第1・第3事件被告・第2事件原告 湯川隆行
同訴訟代理人弁護士 松村剛司
主 文
1 第1事件被告は、第1事件原告松内謙一に対し、金87万4,140円及びこれに対する平成12年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 第1事件被告は、第1事件原告日本興亜損害保険株式会社に対し、金23万7,289円及びこれに対する平成13年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 第2事件被告は、第2事件原告に対し、金74万3,717円及びこれに対する平成12年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 第3事件被告は、第3事件原告に対し、金26万6,481円及びこれに対する平成12年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 第1事件原告ら、第2事件原告及び第3事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、第1事件ないし第3事件を通じて各自の負担とする。
7 この判決第1項ないし第4項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
1 第1事件
(1) 第1事件被告は、第1事件原告松内謙一に対し、金145万6,900円及びこれに対する平成12年12月27日(本件事故日)から支払済みまで年5分の割合による金員(民法所定の遅延損害金)を支払え。
(2) 第1事件被告は、第1事件原告日本興亜損害保険株式会社に対し、金39万5,483円及びこれに対する平成13年2月5日(保険金支払日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 第2事件
第2事件被告は、第2事件原告に対し、金285万9,097円及びこれに対する平成12年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 第3事件
第3事件被告は・第3事件原告に対し・金151万5,295円及びこれに対する平成12年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、後記交通事故に関し、第1事件原告松内謙一(以下「原告謙一」という。)が、その所有する車両の損害につき、民法709条に基づいて、また、第1事件原告日本興亜損害保険株式会社(以下「原告日本興亜」という。)が、原告謙一との間の自動車保険契約に基づいて訴外人に支払った対物賠償保険金につき、商法662条に基づいて、それぞれ第1・第3事件被告・第2事件原告(以下「被告」という。)に対して、損害賠償を請求した(第1事件)のに対し、被告が、原告謙一所有車両の運転者である第2事件被告・第3事件原告松内浩子(以下「原告浩子」という。)に対して、民法709条に基づき、所有する車両の被った損害の賠償を請求し(第2事件)、さらに、これに対する反訴として、原告浩子が、被告に対し、同法同条に基づいて、人身損害の賠償を請求した(第3事件)事案である。
1 争いのない事実等
(1) 原告浩子と、被告との間で、下記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
日 時 平成12年12月27日午後9時50分ころ
場 所 大阪府東大阪市中鴻池町1丁目近畿自動車道天理吹田線下り14.8キロポスト付近
関係車両 1 普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)
運転者 被告
2 普通乗用自動車(以下「原告車両」という。)
運転者 原告浩子
所有者 原告謙一
3 普通貨物自動車(以下「訴外車両」という。)
運転者 成松光城
所有者 株式会社ラントランス(以下「訴外会社」という。)
態 様 原告浩子が原告車両を運転して前記場所の第2車線(片側3車線道路。進行方向左側から数えて第1車線、第2車線、第3車線と呼称する。)を走行中、後方から走行してきた被告車両に追突され、その衝撃で、原告車両が前方を走行中の訴外車両に衝突したもの。
(2) 本件事故により、原告浩子は、顔面打撲、頸椎捻挫、右手打撲、頭部打撲等の傷害を負い、下記のとおり入通院して治療を受けた。
ア 平成12年12月28日~平成13年1月25日
明治橋病院通院(実診療日数4日)
イ 平成13年1月29日~同年4月24日
西森整形外科医院通院(実診療日数33日)
(3) 原告謙一と原告日本興亜は、本件事故当時、原告車両を被保険自動車とする自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた(証拠略)。
(4) 原告日本興亜は、本件保険契約に基づき、平成13年2月5日、訴外会社に対し、訴外車両の修理費用として39万5,483円の対物保険金を支払った(証拠略)。
2 争点
(1) 本件事故状況(原告浩子及び被告の過失の有無、過失相殺)
(原告らの主張)
本件事故は、原告浩子が、原告車両を第2車線から第3車線に進路変更しようとした際、被告車両が後方から猛スピードで原告車両を追い越そうとして走行してくるのを認めたため、進路変更を中止して第2車線に戻ったところ、被告が前方不注視及び速度超過の過失により、原告車両に追突したものであるから、被告は本件事故による原告らの後記損害を賠償すべき義務を負う。
(被告の主張)
本件事故は、被告が被告車両を運転し、時速約100キロメートルの速度で第3車線を走行中、約40メートル前方で原告車両が第2車線から車線変更してくるのを認め、減速して第2車線に進路変更したところ、原告車両がブレーキをかけた上、進路変更を中止して第2車線上の被告車両の直前に戻ったため、被告が急制動措置を講じたものの回避しきれず衝突するに至ったものであり、もっぱら原告の被告車両に対する動静不注視及び車線変更を途中で中止するという不適切で予測不可能な運転方法に起因するものであって、被告に過失はない。
(2) 原告謙一の損害
(同原告の主張)
ア 原告車両の損害(全損) 142万円
イ レッカー費用 3万6,900円
(被告の主張)
ア 原告車両の損害は否認。同車両の時価は110万円が相当である。
イ レッカー費用は認める。
(3) 原告日本興亜の損害
(同原告の主張)
訴外車両の修理費用は39万5,483円であり、原告日本興亜は、同金額を訴外会社に支払ったから、保険代位により、訴外会社の被告に対する損害賠償請求権を取得した。
(被告の主張)
訴外車両の修理費用が39万5,483円であることは否認する。
(4) 被告の損害
(被告の主張)
ア 車両修理費用 209万9,097円
イ 格落損 50万円
ウ 弁護士費用 26万円
(原告らの主張)
争う。車両修理費用は116万9,940円が相当である。
(5) 原告浩子の損害
(同原告の主張)
ア 治療費 4万7,910円
イ 通院交通費 1,600円
ウ 休業損害 114万0,509円
原告浩子は、専業主婦であったところ、本件事故日から最終通院日である平成13年4月24日までの119日間、家事労働に従事できなかったから、基礎収入を平成12年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者・全年齢平均年収349万8,200円として休業損害を算定すれば、下記のとおりとなる。
3,498,200÷365×119=1,140,509
エ 傷害慰謝料 67万円
オ 文書料 800円
カ 損害の填補 △56万0,180円
平成13年7月5日、自賠責保険金56万0,180円を受領した。
キ 確定遅延損害金 1万4,656円
上記自賠責保険金に対する、本件事故日から同保険金支払日まで191日間の確定遅延損害金。
ク 弁護士費用 20万円
(被告の主張)
治療費は認め、その余は不知または争う。
第三 争点に対する判断
1 争点(1)について
(1) 証拠(略)によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件道路は、最高速度が時速80キロメートルに規制された、アスファルト舗装された平坦な直線道路で、本件事故当時、照明により事故現場付近は明るく、路面は乾燥していた。
イ 原告浩子は、原告車両を運転し、時速約80ないし90キロメートルの速度で本件道路第2車線を走行して本件事故現場付近に差し掛かった際、自車前方約40ないし50メートル付近を走行していた車両を追い越そうと考え、第3車線に進路変更すべくサイドミラーで右後方を確認したところ、同車線上を走行してくる車両が見当たらなかったことから、右方向指示器による合図を出し、やや加速しながらハンドルを右に切って進路変更を開始した。
ウ 原告浩子は、原告車両の車体の一部が第3車線に進入した時点で、再度、サイドミラーにより後方を確認した際、後方約40メートル地点付近にかなりの高速度で第2車線から第3車線に進路変更中の被告車両を発見し、自車が第3車線上に進路変更を敢行した場合には衝突の危険があると感じたことから進路変更を中止することにし、ハンドルを左に切り、加速状態からアクセルをやや緩めながら第2車線上に原告車両を戻したところ、被告車両の出すブレーキ音が聞こえ、直後に被告車両に追突された。原告車両は、追突された衝撃で制御を失い、追突地点から約32メートル先で中央分離帯に接触した後、さらに約47メートル進行して第1車線を走行中の訴外車両に接触した後、停止した。
エ 被告は、被告車両を運転して、本件事故現場約1キロメートル手前のインターチェンジから本件道路に入り、第1車線から第2車線に進路変更した際には原告車両が前方を走行していることに気が付いていた。被告は、自車と原告車両との距離が徐々に接近しつつあることを認識しながら、第2車線から第3車線に進路変更を開始した直後、約40メートル前方で原告車両が右方向指示器による合図を出すとともに車体の一部を第3車線上に進出させてくるのを認めて、このまま進行すれば衝突の危険があると感じ、ブレーキを踏んで減速しながらハンドルを左に切って第2車線に進路変更したところ、進路変更を中止して第2車線上に戻った原告車両との間隔が狭まり、急制動の措置を講じたものの間に合わず、原告車両に追突し、その衝撃で被告車両はその前部が大破した。
(2) そこで、まず、被告車両の走行速度について検討するに、この点につき、被告は時速約100キロメートルで走行していた旨供述するけれども、先行車両を追い越そうとして少なくとも時速約90キロメートル程度まで加速していた原告車両を約40メートル前方に認めた際に被告が衝突の危険を感じていること、被告車両がブレーキを踏んで減速しながら第2車線に戻った後も原告車両との車間距離は接近し続け、遂には急制動措置を講じたが、結局、被告車両の前部が大破するほどの速度で原告車両に追突していることからして、原告車両が進路変更を開始した時点の原告車両と被告車両の速度差が時速10キロメートル程度に過ぎなかったとは到底考えられないから、前記被告の供述は信用できず、少なくとも、被告車両は制限速度を時速30キロメートル以上超過する速度で走行していたものと認めるのが相当である。
なお、被告は、原告車両が進路変更を中止して第2車線に戻る際にブレーキをかけたことが衝突の原因である旨主張するようであるが、被告の供述するとおり原告車両が一瞬のブレーキ操作により減速した事実が仮にあったとしても、同車両が大幅な減速をしたものとまでは認めることができないから、上記認定を左右するものではない。
(3) 以上のとおり認定した事実によれば、被告は、制限速度を大幅に超過する速度で被告車両を運転して、自車が第2車線から第3車線に進路変更するのとほぼ同時に、約40メートル前方を走行していた原告車両も同様に進路変更しようとするのを認めたのであるから、原告車両の動静を注視するとともに、十分に減速して原告車両との間に安全な車間距離を保つよう注意すべき義務が存したものというべきところ、原告車両がそのまま進路変更を敢行するのか、進路変更を中止して元の車線に戻るのかを十分に見極めず、かつ、十分に減速して安全な車間距離を保つこともしないまま、第3車線から第2車線に進路変更したため、進路変更を中止して第2車線に戻ってきた原告車両に被告車両を急接近させ、急制動措置を講じるも間に合わず追突したものというべきであるから、本件事故につき過失の存することは明らかである。
他方、原告浩子としても、高速道路上で第3車線(追い越し車線)に進路変更をしようとするに際しては、単に変更先の車線上を走行する車両の有無を確認するだけでなく、本件の場合のようにいわゆる二重追い越し状態となることも十分に予想されるのであるから、自車の後方に位置する車両の有無・動静等についても注意する必要があったところ、進路変更を開始しようとする時点で後方の被告車両に対する注意を欠いていたことが認められるとともに、一旦開始しかけた進路変更を途中で中止して元の車線上に戻る場合には、後方の車両運転者の判断や運転操作を誤らせる危険性が存するのであるから、後方の車両の動静に十分注意した上で戻る必要があったというべきところ、この点においても必ずしも十分な注意を尽くしたものとは認められないから、やはり、本件事故の発生につき過失が存する。
ただ、原告浩子が、進路変更を途中で中止せざるを得なくなった原因が、被告車両が大幅に制限速度を超過して走行していたことにあることを考慮すれば、本件事故における過失割合は、被告の方が大きいといわざるを得ない。
(4) 以上によれば、本件事故における過失割合は、原告浩子が4割、被告が6割と解するのが相当である。
2 争点(2)について
(1) 原告車両の損害(全損) 142万円
(証拠略)によれば、原告車両は、本件事故により、修理価格見積(173万6,249円)が本件事故当時の時価(中古車小売価格、142万円)を超える損傷を被り、いわゆる経済的全損となったことが認められるから、本件事故当時の原告車両の時価額をもって、原告謙一の損害と認める。
(2) レッカー費用 3万6,900円
当事者間に争いがない。
(3) 過失相殺
原告謙一と同浩子は夫婦であり、原告浩子の過失を同謙一の過失と同視することができるから、上記損害額合計145万6,900円につき、前記のとおり4割の過失相殺を行えば、原告謙一の損害は87万4,140円となる。
3 争点(3)について
(1) 訴外車両の修理費用 39万5,483円
(証拠略)によれば、訴外車両の修理費用相当の損害額は、39万5,483円であることが認められる。
(2) 原告浩子と被告の共同不法行為
前記のとおり認定した本件事故状況によれば、訴外会社の上記損害は、原告浩子及び被告の共同不法行為により発生したものと認めるのが相当である。
(3) 原告日本興亜の被告に対する求償権
原告日本興亜は、前記のとおり、平成13年2月5日、本件保険契約に基づいて同金額を訴外会社に支払ったものであるから、商法662条に基づいて、訴外会社の被告に対して有する損害賠償請求権を取得したものであるところ、前記認定の過失割合により、その6割に相当する23万7,289円の限度で被告に求償することができる。
4 争点(4)について
(1) 車両修理費用 168万4,294円
(証拠略)によれば、被告が被告車両修理費用として209万9,097円を自動車修理会社に支払ったこと、原告ら側の損害調査会社は、被告車両の損傷状況を現認し、かつ、上記修理会社の修理見積を検討した上、同修理見積中、エンジンルームコンピューターについては損傷が波及していないと判断し、右フロントドア、ホイル・フロントサスペンション、タイヤ、フロントガラスについては、いずれも取り替えを必要としないと判断し、塗装費用については35万円の見積額に対し22万円が相当な費用であるとして、6項目、合計82万9,605円を否認し、その余は相当な修理費用であると認めて、合計126万9,492円を相当な損害額と認定したことの各事実が認められる。
当事者間で争いのある上記6項目については、前記証拠上、損傷が波及しているか否か、部品取り替えの要否等についての一義的な判断が困難であるが、諸般の事情を考慮して、争いのある金額の半額に当たる41万4,802円の限度で相当な損害と認めることとし、これに争いのない修理金額126万9,492円を加えた168万4,294円をもって、被告車両の相当な修理費用と認める。
(2) 格落損 0円
(証拠略)によれば、被告車両は、初度登録が平成8年5月で、本件事故当時の走行距離が4万4,800キロメートル余りのメルセデスベンツであり、被告が、平成12年11月ころ、約500万円で購入したもので、本件事故当時の時価は約410万円程度であったことが認められる。
上記事実に鑑みれば、被告が、被告車両の前記修理によっては賄いきれない外観上・機能上の損害を被ったものとは認めることができないから、格落ち損の請求は理由がない。
(3) 過失相殺
被告車両修理費用につき、前記のとおり6割の過失相殺をするのが相当であるから、損害額は67万3,717円となる。
(4) 弁護士費用 7万円
相当な弁護士費用は7万円であるから、これを加算すれば、被告の損害は74万3,717円となる。
5 争点(5)について
(1) 治療費 4万7,910円
当事者間に争いがない。
(2) 通院交通費 1,600円
(証拠略)によれば、原告浩子は、明治橋病院への通院(4日間)に際してバスを利用し、1回の往復交通費は400円であることが認められるから、通院交通費は1,600円となる。
(3) 休業損害 58万3,033円
(証拠略)によれば、原告浩子は、専業主婦であったところ、前記「争いのない事実等」記載のとおり、本件事故で受傷し、投薬及びリハビリ等の通院治療を受けたものであることが認められる。
その受傷程度、治療内容、通院経過に鑑みれば、当初約1か月間程度は安静を要したものと考えられるが、その後は実通院日数程度の休業期間を認めるのが相当というべきであるから、相当な休業期間は通算して2か月間と認める。原告浩子の主婦としての家事労働を経済的価値として評価すれば、平成12年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者・全年齢平均年収349万8,200円が相当であるから1、休業損害を算定すれば、下記のとおりとなる。
3,498,200÷12×2=583,033
(4) 傷害慰謝料 67万円
原告浩子の受傷程度、通院経過に鑑みれば、傷害慰謝料は67万円が相当である。
(5) 文書料(交通事故証明書発行費用) 800円
(証拠略)により、相当な損害と認める。
(6) 過失相殺
上記損害額の合計は、130万3,343円となるところ、4割の過失相殺を行うと78万2,005円となる。
(7) 損害の填補 △56万0,180円
原告浩子が、平成13年7月5日、自賠責保険金56万0,180円を受領したことは、(証拠略)によりこれを認める。
これを上記損害額から損益相殺すれば、22万1,825円となる。
(8) 確定遅延損害金 1万4,656円
上記自賠責保険金額に対する、本件事故日から同保険金支払日まで191日間の確定遅延損害金を年365日で日割計算すれば、1万4,656円となる。
これを上記損害額に加算すれば23万6,481円となる。
(9) 弁護士費用 3万円
上記損害額その他諸般の事情に鑑みれば、弁護士費用は3万円が相当である。これを加算すると、原告浩子の損害は26万6,481円となる。
6 結論
以上によれば、本件各請求は、上記2ないし5で認定した各損害額及びこれらに対する民法所定の遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
よって、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第15民事部
裁判官 福井健太