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高速道路SA内の駐車場を横断中の被害者と乗用車の衝突事故、時速25キロメートルでわき見走行していた乗用車に対し、被害者の過失相殺を20%

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【判決要旨】
高速道路のサービスエリア内の駐車場を横断中の被害者と乗用車の衝突事故について、時速25キロメートルでわき見走行していた乗用車に対し、被害者の過失相殺を20%とした。

   東京地裁 平成19年11月28日判決(控訴中)
   事件番号 平成18年(ワ)第26752号損害賠償請求事件

【事案の概要】
 52歳女子大卒営業契約社員のAは、平成17年5月3日午後2時45分ころ、茨城県下の高速道路サービスエリア内駐車場通路を歩行横断中、被告運転の乗用車に衝突され、3日後死亡したため相続人の長男らは1億1,867万9,640円を求めて訴えを提起した。
 裁判所は、ゴールデンウィークの高速道路駐車場内通路を歩行横断中、わき見運転の乗用車に衝突、死亡したAの過失を2割と認定した。
 幅約7メートル、制限速度30キロメートル、左右は駐車車両で見通しが悪い高速道路サービスエリア内駐車場通路を乗用車で走行中、時速25キロメートルの速度で「35.8メートル」にわたり「わき見をしていた」間、左から右に横断中のAに衝突のYの過失に対し、「車両の有無及び動静を十分確認」を怠ったAの「過失割合は2割」と認定した。
 52歳女子大卒営業契約社員の逸失利益算定につき、「契約年齢の上限である65歳まで」実収入、以降センサス大卒65歳以上を基礎に生活費3割控除で認定した。
 裁判所の判断は以下のとおり。

判   決
  原告           甲野春子
  原告           甲野一郎
  原告           甲野三郎
  上記3名訴訟代理人弁護士 安原幸彦
   同           長尾詩子
  被告           乙山次郎
  被告           Y会社
  上記両名訴訟代理人弁護士 相澤建志
   同           藤井秀夫
   同           奥田博司

【主   文】
1 被告らは、連帯して、原告春子に対し2,537万9,225円、原告一郎に対し2,537万9,224円、原告三郎に対し2,537万9,224円及びこれらに対する平成17年5月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを3分し、その1を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

【事   実】
第一 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告らは、原告らに対し、連帯して各3,955万9,880円及びこれに対する平成17年5月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告らの負担とする。
(3) (1)につき仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
1 請求原因
(1) 事故の発生
 甲野花子(昭和27年10月生まれ。以下「花子」という。)は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)に遭って頭部外傷を負い、平成17年5月6日、脳挫傷により死亡した。
日時    同月3日午後2時15分ころ
場所    茨城県〈地番略〉
加害車両  普通乗用自動車((ナンバー略)。以下「被告車両」という。)
運転者   被告皆川(以下「被告乙山」という。)
事故の態様 被告車両がサービスエリア駐車場内通路を駐車場出口方面に向かい直進中、進路前方を左方から右方に横断していた花子と衝突した。
(2) 責任原因
 ア 被告乙山は、本件事故の当時、被告車両を運転して、自己のために運行の用に供していたから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条本文に基づき、花子らが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
 イ 被告Y会社は、本件事故の当時、被告車両を所有し、自己のために運行の用に供していたから、自賠法3条本文に基づき、花子らが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
(3) 損害等
 ア 花子の損害
  (ア) 入院治療費 44万927円
  (イ) 葬儀費用 150万円
  (ウ) 逸失利益 7,794万9,655円
 花子は、本件事故の当時、B社において営業の仕事に従事し、平成16年の所得は777万3,914円(総手数料は4,078万円)であり、平成17年4月1日に「契約型B」から「契約型S」に移行したところ、「契約型S」の場合、保障給30万円と実績給とのいずれか多い方を支給され、実績給は、総手数料が300万円以下の部分は実績給率25%、総手数料が300万円超500万円以下の部分は35%、総手数料が500万円超の部分は50%であり、花子が平成16年に獲得した総手数料に「契約型S」を当てはめると実績給は1,078万7,639円となり、「契約型B」の年収777万3,914円より約38%上回るから、基礎収入は、1,072万8,001円(777万3,914円×1.38)となる。
 1,072万8,001円×(1-0.3)×10.380≒7,794万9,655円
  (エ) 慰謝料 2,800万円
 イ 相続
 原告らは、花子の子である。
 ウ 原告らの損害-弁護士費用 1,078万9,058円
(4) まとめ
 よって、原告らは、被告らに対し、自賠法3条本文に基づき、連帯して各3,955万9,880円及びこれに対する不法行為の日である平成17年5月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)及び(2)は認める。
(2)ア(ア) 請求原因(3)ア(ア)は認める。
  (イ) 同(イ)は知らない。
  (ウ) 同(ウ)は争う。
 a 花子のB体系中の月次報酬は、平成14年度で28万6,500円ないし72万400円、平成15年度で50万8,896円ないし90万9,000円、平成16年度で49万4,300円ないし93万5,700円と大きく変動しているし、契約型Sの雇用契約書5条には契約しない場合(契約更新拒否基準。月平均総手数料300万円未満)が定められている一方で、平成16年度の月平均手数料は339万8,000円と契約更新拒否基準をわずかに超える程度であったほか、平成14年度の月平均手数料も平成15年度の月平均手数料も300万円未満であったことからすると、契約型Sが継続することを前提として基礎収入を定めることは妥当でない。花子の給与は、雇用契約の内容から、営業成績によって大幅に変動する性格のもので
あるところ、平成14年4月ないし平成15年3月の給与支給額は571万3,500円、同年4月ないし平成16年3月の給与支給額は734万8,327円、同年4月ないし平成17年3月の給与支給額は777万3,914円と大きく変動していることから、基礎収入は、事業所得者におけると同様、過去3年分の平均を採用すべきであるし、証券外務員は顧客獲得、維持のために一定程度の接待交際費を支出するから、3割程度の経費を控除すべきである。
 b 契約型Bの定年は60歳であるから、労働能力喪失期間の終期は60歳を超えない。また、契約型Sの定年は65歳であり、いずれにしても67歳までの15年に対応するライプニッツ係数を採用することはできない。
 c 原告らは、いずれも扶養の必要な年齢を超えており、源泉徴収票上も扶養親族はいないことになっているから、花子は、一家の支柱には該当しないところ、その収入は同年齢の平均賃金よりも高いことも考慮すると、生活費控除率は5割が相当である。
  (エ) 同(エ)は争う。
 2,400万円を超えることはない。
   イ 同イは認める。
   ウ 同ウは争う。
 3 抗弁-過失相殺
 本件事故は、ゴールデンウィークのために多数の車両が往来していたサービスエリア駐車場内において、花子が駐車スペースに止めていた自車に戻るたに、駐車場内の通路を横切るに当たり、左右から往来する車両とのないことを十分に確認すべき義務があるのにこれを怠り、駐車車両の陰から小走りに、かつ、被告車両の直前を横断した結果、発生したものであるから、花子の過失割合は4割を下回ることはない。
 4 抗弁に対する認否
 否認ないし争う。
 本件事故は、花子が被告車両に背を向けるようにして斜めに横断していたところを後方から被告車両によって衝突されたものである。

【理   由】
1 請求原因(1)(本件事故の発生)及び(2)(責任原因)について
 請求原因(1)及び(2)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。
2 請求原因(3)(損害等)ア(花子の損害)について
(1) 入院治療費 44万927円
 請求原因(3)ア(ア)(入院治療費)の事実は、当事者間に争いがない。
(2) 葬儀費用 134万1,374円
 証拠(略)によると、花子の葬儀費用として、134万1,374円の支出がされたことが認められるところ、本件事故と相当因果関係のある損害としては同額を認めるのが相当である。
(3) 逸失利益 6,076万4,791円
 ア 証拠(略)によると、次の事実が認められる。
  (ア) 甲野四郎は、昭和26年2月に出生し、昭和51年4月、花子(昭和27年10月生まれ)と婚姻の届出をし、長女である原告春子(昭和51年9月生まれ。以下「原告春子」という。)、長男である原告一郎(昭和52年10月生まれ。以下「原告一郎」という。)、2男である原告三郎(昭和56年11月13日生まれ。以下「原告三郎」という。)をもうけたが、昭和57年5月2日、死亡した。
  (イ)a 花子は、昭和50年3月、大学を卒業し、夫の死後、B社において営業専門社員(ファイナンシャルアドバイザー)として稼働していたところ、ファイナンシャルアドバイザーは、1年ごとに契約を交わす有期雇用契約の従業員であり、契約の型にはBコースとSコースとがあった。各コースの主たる契約条件について、B社が発行した募集要項には、(a)のような記載がされているところ、花子は、平成17年4月から契約型Sに移籍した。なお、花子が平成16年3月3日に交わした営業専門社員「契約型B」雇用契約書及び平成17年3月12日に交わした営業専門社員「契約型S」雇用契約書には、(b)のような記載がされている。
  (a) 各コースの主たる契約条件
   ⅰ Bコース
    ① 対象者
 「短大・大卒以上45歳まで。金融業界経験者は45歳まで、未経験者は35歳まで。※試用期間中に2種証券外務員資格を取得していただきます。」
    ② 給与
 「試用期間中の保障給は20万円。本採用後は月額保障給27万円(初年度のみ/勤務年数に応じて減額します)営業実績に応じて実績給がつき、実績給※か保障給のどちらか多い方を支給します。実績給に上限はありません。※実績給…各商品別手数料に対して、約20%程度を支給。※資金導入手当、株投純増手当があります。」
    ③ 契約年齢の上限
 「最長60歳」
    ④ 再雇用制度
「有。最長65歳まで。」
    ⅱ Sコース
    ① 対象者
 「証券業務経験者で、1種(一般)外務員資格保有者。」
    ② 給与
 「月額保障給30万円(固定/勤続年数に関係なく一律です)営業実績に応じて実績給がつき、実績給※か保障給のどちらか多い方を支給します。実績給に上限はありません。※実績給…総手数料に対して25%~50%を支給。※資金導入手当、株投純増手当があります。」実績給率は、総手数料が300万円以下の部分は25%、300万円超500万円以下の部分は35%、500万円超の部分は50%
    ③ 契約年齢の上限
 「最長65歳」
    ④ 再雇用制度
 「制度なし。(契約可能年齢が65歳までなため)」
   (b) 雇用契約書の記載内容
    ⅰ 平成16年3月3日付け営業専門社員「契約型B」雇用契約書
 第1条
 「B社株式会社(以下「甲」という)は、甲野花子(以下「乙」という)を平成16年4月1日から平成17年3月末日までの1年間を契約期間として営業専門社員「契約型B」として採用する。ただし、雇用契約開始から1年以内に満60歳に達する者の雇用期間は、満60歳に達する日の属する月の末日までとする。」
 第6条
 「甲は、乙の給与は給与規定に基づき支給するものとする。
  (1) 乙の給与は、実績給と保障給のいずれか多い方を支給する。
  (2) 保障給は、17万円とする。
  (3) 給与支給の計算方法は次のとおりとする。
 当月保障給+(前月実績給-前月保障給)=当月支給額
 ただし、(前月実績給-前月保障給)がマイナスの場合は0として計算する。」
      ⅱ 平成17年3月12日に付け営業専門社員「契約型S」雇用契約書
 第1条
 「B社株式会社(以下「甲」という)は、甲野花子(以下「乙」という)を平成17年4月1日から平成18年3月末日までの1年間を契約期間として営業専門社員「契約型S」として採用する。ただし、雇用契約開始から1年以内に満65歳に達する者の雇用期間は、満65歳に達する日の属する月の末日までとする。」
 第5条
 「甲は、乙が就業規則第18条に規定する各号の1に該当する場合は、契約を更新しないものとする。なお、就業規則第18条第2号に定める「業務成績について、甲が別途に定める基準に満たないとき(以下「契約更新拒否基準」という)は次のとおりとする。
 契約更新拒否基準:月平均手数料(自己客と引継客の合計)300万円未満」
 ただし、1回目の査定期間は、「契約型S」本採用契約月から起算して9ヶ月間とし、2回目以降は契約更新月の3ヶ月前の月から起算して12ヶ月間とする。」
 第7条
 「甲は、乙の給与は給与規程に基づき支給する。
  (1) 給与は、実績給か保障給のいずれか多い方を支給する。
  (2) 保障給は30万円とする。
  (3) 給与支給の計算方法は次のとおりとする。
 当月保障給+(前月実績給-前月保障給)=当月支給額
 ただし、(前月実績給-前月保障給)がマイナスの場合は0として計算する。」
 b 花子がB社から平成14年4月から平成17年3月までの間に支給を受けた給与は、(a)のとおりである(なお、平成16年4月から平成17年3月までの間に支給された資金導入手当の総額は12万1,693円であった。)とともに、実績給の算出根拠となる手数料は(b)のとおりであり、平成16年に支給された給料・賞与の額は777万3,914円であった。なお、花子に係る同年分の給与所得の源泉徴収票には扶養親族の記載はない。
 (a) 給与支払額
  年月      保障給又は実績給   その他手当    支給額合計
平成14年 4月   519,900   15,500   535,400
      5月   369,500   15,500   385,000
      6月   704,900   15,500   720,400
      7月   536,900   15,500   552,400
      8月   337,000   15,500   352,500
      9月   467,300   15,500   482,800
     10月   271,000   15,500   286,500
     11月   491,500   15,500   507,000
     12月   455,700   15,500   471,200
平成15年 1月   519,700   15,500   535,200
      2月   426,300   15,500   441,800
      3月   427,800   15,500   443,300
      4月   487,000  109,140   596,140
      5月   541,800   15,500   557,300
      6月   507,000   15,500   522,500
      7月   502,100   15,500   517,600
      8月   697,400   15,500   712,900
      9月   549,000   15,500   564,500
     10月   730,900   29,991   760,891
     11月   893,500   15,500   909,000
     12月   546,800   15,500   562,300
平成16年 1月   481,300   27,596   508,896
      2月   565,900   15,500   581,400
      3月   539,400   15,500   554,900
      4月   935,700
      5月   527,900
      6月   520,400
      7月   494,300
      8月   717,500
      9月   514,900
     10月   671,700
     11月   564,600
     12月   635,300
平成17年 1月   676,000
      2月   693,700
      3月   922,300
   (b) 手数料実績
 年月 左記月に支給した実績給の算出根拠となる手数料実績
平成14年 4月   2,428,660
      5月   1,847,372
      6月   3,537,790
      7月   2,696,363
      8月   1,696,678
      9月   2,348,137
     10月   1,366,443
     11月   2,468,604
     12月   2,289,509
平成15年 1月   2,600,087
      2月   2,134,006
      3月   2,141,140
      4月   2,437,235
      5月   2,699,342
      6月   2,542,325
      7月   2,517,284
      8月   3,494,764
      9月   2,753,350
     10月   3,413,179
     11月   4,476,684
     12月   2,742,798
平成16年 1月   2,415,668
      2月   2,843,950
      3月   2,715,471
      4月   4,700,000
      5月   2,770,000
      6月   2,710,000
      7月   2,460,000
      8月   3,400,000
      9月   2,710,000
     10月   3,440,000
     11月   2,950,000
     12月   3,270,000
平成17年 1月   3,420,000
      2月   3,530,000
      3月   5,420,000
   c B社が花子に係る平成16年度の手数料に基づき平成17年度(同年4月から平成18年3月まで)の給与を試算した結果をまとめた平成17年8月23日付け書面には、花子の同年度の年収が925万8,014円となる旨の記載がされている。
   イ 以上の事実関係によると、本件事故と相当因果関係のある逸失利益は、死亡時である52歳から契約年齢の上限である65歳までは本件事故の前年である平成16年の年収を、その後69歳(平成17年簡易生命表によると52歳女子の平均余命は34.94年であり、その約2分の1は17年となる。)までは賃金センサス平成17年第1巻第1表による産業計・女性労働者・大卒・65歳以上の平均年収額をそれぞれ基礎とし、生活費控除率は3割とし、中間利息をライプニッツ方式で控除して、次の計算式のとおり算出した6,076万4,791円を認めるのが相当である。
 777万3,914円×(1-0.3)×9.3936+732万8,800円×(1-0.3)×(11.2741-9.3936)≒6,076万4,791円
 これに対し、原告らは、基礎収入につき契約型Sを前提として算定すべきである旨主張し、証人丙川の証言(同証人からの聴取内容を記載した聴取報告書(証拠略)を含む。)中には、花子が本件事故に遭わずに働き続けていても契約型Bに戻ることはなかったと思われる旨の供述部分があるものの、これを的確に裏付ける客観的な証拠があるわけではなく(それまでに契約型Sの更新条件を満たせずに契約型Bとなった営業専門社員がほとんどいなかったというにすぎない。)、前示のとおり、花子は、契約型Sに移籍してわずか1か月後に本件事故に遭っていることをも併せ考えると、原告らの主張は、にわかに採用することができない。
  (4) 慰謝料 2,400万円
 花子の年齢、家族構成その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、花子の死亡による慰謝料は、2,400万円が相当である。
  (5) 小計 8,654万7,092円
 以上の損害額を合計すると、8,654万7,092円となる。
 3 抗弁(過失相殺)について
  (1) 前示事実関係に証拠(略)を総合すると、次の事実が認められる。
   ア 本件事故の場所は、高速自動車国道インターチェンジから北東方約3.2キロメートルの地点に位置する高速自動車国道下り線サービスエリア駐車場(以下「本件駐車場」という。)であるところ、本件駐車場は、自動車道下り線西側に位置し、西方には食堂、便所等が建ち並んでいた。
 本件駐車場は、入口から出口に向かいほぼ南北に通路が設けられ、その幅員は約6.9メートルであり、歩車道の区別はなく、出口方面に向かって左側は白色ペイントで幅約2.3メートル、長さ約5.0メートルの駐車枠として区分される一方、右側は大型自動車用の駐車枠となっていたところ、路面はアスファルト舗装されて平たんであった。
 本件駐車場内は、最高速度毎時30キロメートルの交通規制がされていた。
 平成17年5月3日午後2時40分から午後3時55分までの間、本件事故の場所付近の通路を通行する車両は1分間に約10台、通路を横断する歩行者は1分間に約15人、駐車車両は約120台であった。
 なお、本件事故の場所の状況は、別紙交通事故現場見取図のとおりである。
   イ 花子は、平成17年5月3日午後2時15分ころ、自動車を運転して、原告一郎及び原告三郎とともに外出をし、サービスエリアにおいて休憩をとり、売店において昼食を購入した後、本件駐車場に駐車していた自動車に戻ろうとして通路を徒歩で横断する途中、走行する被告車両と衝突し、路上に転倒した。
   ウ 被告乙山も、同じ時刻ころ、被告車両を運転して、本件駐車場の通路を入口方面から出口方面に向かい時速約25キロメートルで走行中、助手席に同乗していた父親から、約67.3メートル右斜め前方(通路の右端から約23.5メートル離れた地点)に駐車しているトラックの荷台にフェラーリが積載されている旨告げられ、当該フェラーリを見ながら約35.8メートル進行すると、被告車両に背を向けるような感じで左方から右方に向かい斜めに通路を横断している花子を発見した父親が「危ない」と叫んだことから、視線を前方に戻したところ、約7.5メートル前方に歩行中の花子を発見し、急ブレーキを
かけたものの間に合わず、約7.9メートル進行して花子と衝突し、その後被告車両は約1.1メートル進行して停止した。
 なお、被告車両の進路からの前方は、見通しを妨げるものはなく約150メートル先まで視認することができるが、左方及び右方は駐車車両等により視認が困難であった。
  (2) 以上の事実関係によると、花子は、本件駐車場の通路を横断するに当たり、左方から出口方面に向かい走行する車両の有無及び動静を十分確認すべき義務があるのにこれを怠り、漫然と通路を横断した結果、本件事故の発生を招いたと推認することができ、本件事故の発生につき相応の落ち度があるというべきであるところ、花子は、車両が頻繁に通行する本件駐車場の通路を斜めに横断していた一方、被告乙山は、約35.8メートルも進行する間、時速約25キロメートルのままわき見をしていたなど前示した本件事故の場所の状況、本件事故の態様、被告乙山の過失の程度を考慮すると、その過失割合は2割とするのが相当である。
 そうすると、過失相殺後の損害額は、6,923万7,673円となる。
 4 請求原因(3)イ(相続)について
 請求原因(3)イの事実は、当事者間に争いがない。
 そうすると、原告らは、原告春子につき2,307万9,225円、原告一郎及び原告三郎につき各2,307万9,224円(割り切れない1円は原告春子に割り振った。)のそれぞれ損害賠償請求権を取得したこととなる。
 5 請求原因(3)ウ(原告らの損害-弁護士費用)について
 弁論の全趣旨によると、原告らは、本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束していることが認められるところ、本件事案の性質、審理の経過、認容額その他諸般の事情を考慮すると、原告らが本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求めることができる弁護士費用は、各230万円が相当である。
 6 結論
 よって、原告らの請求は、被告らに対し、連帯して、原告春子につき2,537万9,225円、原告一郎につき2,537万9,224円、原告三郎につき2,537万9,224円及びこれらに対する不法行為の日である平成17年5月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度においていずれも理由があるから認容し、その余はいずれも失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法61条、64条本文、65条1項本文を、仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(口頭弁論の終結の日 平成19年10月10日)

   東京地方裁判所民事第27部
       裁判官 小林 邦夫

運営者情報

弁護士法人ウィズ代表弁護士
岡崎 秀也

経歴

昭和35年 12月16日生まれ
昭和54年3月 埼玉県立川越高校卒業
昭和60年3月 中央大学法学部卒業
平成2年11月 司法研修所入所 司法研修所期
平成3年4月 司法研修所入所(45期)
平成5年4月 弁護士登録
平成6年4月 卓照法律事務所入所(後に卓照綜合法律事務所に改称)
平成23年2月 弁護士法人ウィズ設立
現在 弁護士法人ウィズ 代表弁護士

所属・職歴

第一東京都弁護士会所属(登録番号23120)

平成6年4月 東京三弁護士会交通事故処理委員会
日弁連交通事故相談センター東京支部委員(現在も同じ)
平成11年5月 同支部嘱託
平成13年5月 同支部副委員長
算定基準部会長を兼務
(「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」
(いわゆる「赤い本」)の編集責任者)
平成18年12月 日本司法支援センター(法テラス)アドバイザリースタッフ
平成22年4月 同支部副委員長
平成23年4月 同委員会委員長
その他
  • 日本賠償科学会
  • 日本交通法学会会員
  • 日弁連交通事故相談センター本部高次脳機能障害相談員
  • 出版委員
  • 第一東京弁護士会医療相談員

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