むち打ち症では後遺障害が認定されないのですか。
- むち打ち症では,後遺障害として,12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」か14級9号「局部に神経症状を残すもの」が認定されるか,が問題となります。「後遺障害にはどんなものがあるか」を参照ください。
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- むち打ち症には,「むち打ち損傷ってどういう病気ですか」で述べたとおり,①頚椎捻挫型,②根症状型,③バレー・リュー症状型,④根症状+バレー・リュー症状型,⑥胸郭出口症候群の類型があります(⑤脊髄症状型は除きます)。
- このうち,②根症状型の場合で、検査により他覚所見が取れ、ブロック注射や手術のような治療がなされていれば、12級13号が認定されると思います。なお、ヘルニアが事故で起こったのではなくとも、事故を契機として発症したのであっても、12級9号が認定されている例があります。その場合、事故でヘルニアになったのではないとして素因減額の主張(もともと体にあった素因が、症状に影響しているから減額すべき)との主張がなされることがありますが、12級9号程度では減額されていないことも多いと思われます。
- 根症状以外の類型の場合は、検査による他覚所見が取れないのがほとんどと思われますので,14級9号が認定されるか,という問題になります。12級13号も稀にありますが極めて少ないと思います。これらの場合、ほとんどの例であれば自然と治癒するため、後遺障害等級はつかない ことが多いです。ただし、14級9号が付いている場合があります。これは、6か月間治療しても痛みが消失しなかった場合に限られています。この痛みの継続は、医師がなかなかカルテに記載に記載してくれないために、痛みが残っていても後遺障害認定にならない場合がよくあります。医師は、事故発生当初、「痛みますか」と聞ききますが、患者が、「痛みます」と答えても、「事故直後ですから当然ですね」と、カルテに痛みを記載してくれないことがよくあります。しかし、一ヶ月もして、患者が痛みを訴えると、それはおかしいと考えて、「痛み(pain+)」と記載します。つまり、医師のなかには、カルテは、治療のためのもので、事故後の治療経緯を全て記録するものではない、医学的に記載しておいた方がいいことを書けばよいとの考え方の人がいて、上記のような記載をする場合があります。このような場合は、自賠責は、「痛みが事故直後から出現したのでないから、事故と因果関係がない」として14級9号が付かないということになります。つまり、事故直後から同じ痛みが残っていても、後遺障害等級が付く人と付かない人がいるということです。
この後者の人を、弁護士が救えるかというと極めて難しいのが実際です。何故なら、14級9号は痛みの連続で付くもので、医師が当初、痛みをカルテに記載してもらっていないと挽回することがほぼ不可能になるからです。後日、医師に掛け合っても「痛みがあったかは分からない」としか答えてくれません。そこで、むち打ち案件こそ、事故直後から、弁護士に依頼し、かかった医師が交通事故に理解があるかを確かめるのが重要になります。場合によっては、早急に医師を交代しなければなりません。 - なお,法律事務所によっては,交通事故に理解がある医師のリストも用意しているようです。なお,「後遺障害等級はどうやって認定されるか」も参照下さい。
- 頚椎捻挫等の神経症状の場合,通院は,整形外科へ週2~3回,2週間に5回以上通院するのが望ましいところです。
それ未満ですと,症状にもよりますが,実際の通院期間よりも少ない通院期間が認定されたり(休業損害,慰謝料に影響),後遺障害認定の際に現状の症状より不利に扱われることがあります - 痛み,めまい,頭痛が続く場合は,ペインクリニックの受診も整形外科の先生に申し出てみてください(バレリュー症候群)。ブロック注射などが効果的な場合があります